小説

『クリスマスの聖霊たち』和木弘(『クリスマス・キャロル』チャールズ・ディケンズ)

 そのため俺は、資格を取ってもっと給料の良い会社に転職しようと考えるようになった。俺は試験勉強に集中するあまり、当時付き合っていた彼女とも距離ができてしまっていた。転職さえ成功すれば彼女と幸せになれる。そう思って頑張っていたのに、結局彼女は俺の元を去って行った。
 その後、資格取得にも失敗した俺は、少しやけ気味に会社を辞めてしまったのだった。
 「結局転職しても同じことの繰り返しじゃない。なぜ、そうなるのか分かる?」
 またもおばちゃんの聖霊から突っ込まれる。
 「そりゃ、会社や社長が自分の都合しか考えていないからさ。それでシワ寄せが全部俺の方に来るのさ」
 「自分の都合しか考えてないのはあんたの方でしょ。相手や環境の粗探しをして、自分を正当化してごまかしているだけ。だから同じことを繰り返すことになるのよ」
 俺は返す言葉もなかった。
 「いい? あんたはね、相手が自分にとって都合良く変わってくれることばかり願ってるのよ。だから何も変わらないの。まずは、あんたが変わらなければ何も変わらないのよ」
 「俺の方が変わる・・・?」
 「そう、変えることができるのは自分だけ。現在の自分の状況を変えたいなら、まず自分を変えることね」
 自分を変えろ。そう言われても俺には理解できなかった。自分を変えるってどういうことだ? どうすれば変われるんだ?
 「ピンとこないみたいね。あんたが何故、自分を変えることができないか、そのカギはあんたの過去にあるのよ」
 おばちゃんの聖霊はチラッと腕時計を見た。
 「おっと、もう時間だわ。次の人のとこに行かなきゃ。ああ、忙しい。あとは過去の聖霊さんが教えてくれるわ。じゃ、がんばってね」
 そう言うとおばちゃんの聖霊は消えてしまった。
 未来を変えるカギは現在にあり、現在を変えるカギは過去にある・・・?
 俺はまた闇の中に取り残された。
 

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