小説

『凸凹仲間の新たな挑戦』春日あかね(『ブレーメンの町楽隊』)

 呂端(ろばた)と犬川と猫柳(ねこやなぎ)と鳥山は、不法侵入者をどうやって家から追い出すかと頭をひねり、とうとういい考えを思いついたのだった。
 呂端(ろばた)が家の壁に立て掛けてあったはしごを持って来た。そして、犬川に庭に転がっている大・中・小の桶を持ってくるように言った。それから、こう言った。
「猫柳(ねこやなぎ)くん、きみは、身軽そうだから、このはしごの一番てっぺんに上ってくれるかな?それで、この一番小さい桶を持ってくれるかな?」
猫柳(ねこやなぎ)は言われた通りに、はしごの一番てっぺんに登り、一番小さな桶を片手で抱えた。
「私は猫柳(ねこやなぎ)くんの下に行くよ。鳥山くん、一番大きな桶を取ってくれないか?」と、呂端(ろばた)は、はしごに登り、猫柳(ねこやなぎ)のすぐ下に止まって、片手ではしごを掴み、もう片方に一番大きな桶を抱えた。そして、続けて、
「で、鳥山くん、きみは、私のすぐ下に立って、二番目に大きな桶を持ってくれるかな?」
 鳥山は、多少不安もあったけれど、これから行われることに期待の気持ちいっぱいで、顔に笑みを浮かべ、言われた通りに呂端(ろばた)のすぐ下に立ち、二番目に大きな桶を片手で抱えた。
 最後に犬川が鳥山の下についた。

 用意ができると、四人は合図をし合って、いっせいに音楽を奏で始めた。呂端(ろばた)と猫柳(ねこやなぎ)と鳥山が桶を逆さにし、太鼓代わりに、桶を素手で叩いた。そのリズムに合わせて、犬川が小さなスコップを両手に持ち、そのスコップを合わせてリズムを取った。
 鳥山が高い声で歌い始めた。それに続き、犬川と猫柳(ねこやなぎ)がさらに大きな声を発し、歌い始めた。まるで、ラテン音楽みたいに軽快でリズム感に溢れていた。
 しかし、四人はリズムある音楽に身を任せ、ついつい大きな音をたててしまった。それは、彼らの声と太鼓の桶の音、それに加えて、スコップとスコップがぶつかり合う音、その微妙なハーモニーは、まるで打楽器によるオーケストラそのものだった。四人は一旦演奏を止め、すぐさま、鳥山が小走りでドアの方へと歩いていき、音をたてずにドアの鍵を開けた。その瞬間、開けた扉の向こう側の鳥山に目もくれず、三人の不法侵入者たちが、ものすごい勢いで、玄関から逃げ出していった。

「ちょっと待ちなさい!」
 不法侵入者が外へ飛び出して来たところを呼び止めたのは、呂端(ろばた)だった。
 三人の不法侵入者は、それぞれに顔を見合わせた。
「きみたち、教えてくれ。どうして、この家に侵入したんだ?」
「え、どうしてって言われてもよぉ・・・。なぁ、お前、なんでこんなことしたんだよ!」 と、一番恰幅のいい男が痩せこけた男の頭をポカリと叩いて、罰悪そうに言った。
「え!だって、親分が「この家は、食料がたくさんあって、留守にしてることも多いって言ったから・・・」」
「うん、おいらも聞いただよ」
「じゃ、なんだよ、お前ら!人のせいにしようってか?」
 恰幅のいい男は、二人の子分たちの頭をポカポカと叩き始めた。
「内輪もめは止めてくださいよ」犬川が恰幅のいい男と二人の子分の間をかき分け、間に入り込んだ。

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