小説

『雪女』宮本康世(『雪女』)

 そのひとは雪女になったのだろうか。それとも祖父が雪女にしたのだろうか。
 春が来るころには、納屋の氷の彫刻は溶けていった。
 そして、次の冬が来て、雪が降る日が続いても、とうとう祖父は雪女を彫ることはなかった。
 僕は、二度と雪女に会うことはないのだろう。そう考えたとき、門前に立っていた女の姿がはかなく思い出された。

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